セラピー犬、ゴールデンレトリバー

愛犬家の皆さんの愛くるしいワンちゃんの写真を見ていると、犬好きな私は癒されると同時に、かつて飼っていたセラピー犬とも言える犬(ゴールデンレトリバー)と共に過ごした頃を思い出し、再び飼ってみたい衝動に駆られる事があります。




我が家のセラピー犬回顧録

我が家には子供が小学生から中学生の頃、ゴールデンレトリバーの男の子ヴェル君がいました。

ヴェル君を飼うきっかけは、繊細な末娘が小学生の頃 一時的に学校に行けなくなり親を悩ませました。
そんな娘の希望もあり、心の拠り所になるのであればと飼う事になったのです。

生後1ヶ月程で我が家の一員になったヴェル君は、すぐに家族の人気者となり家の中を明るい雰囲気にしてくれました。

言い知れない不安要素を持ち続けていた娘は、ぬいぐるみのように愛くるしいヴェル君を可愛がる事で、次第に気持ちも落ち着き、徐々に元の元気な子供へと回復していきました。

ヴェル君の生活

ゴールデンレトリバーは20Kg以上になる大型犬で、力も強くしっかりとしつけをして、飼い主や家族の言うことを理解できる犬にならないと子供では手に負えなくなります。
ヴェル君は気性が優しく、しつけもしやすかったので娘の友達でもあり良きパートナーでした。

家族と一緒に家の中で半年程過ごしていましたが、ヴェル君のストレスが溜まらない様、屋外で犬本来の過ごし方ができる様に大型のドッグハウスを作り、日当たりの良い庭で過ごす様になりました。
娘は、家の中に興味津々のヴェル君を気遣い、ドッグハウスの中で一緒に昼寝をする事も度々ありました。

水の中に入ったり、雨で濡れる事を苦にしない 犬種だったので水浴びが大好きでした。
公園に行けば池の中に入り、砂浜に行けば泳ぎだす始末、長い毛が濡れて汚れる事も平気でした。

綺麗に汚れを落としたり独特の匂いを少なくするために、定期的に体を洗ってあげる事がが必要でした。
娘と二人がかりでシャンプーやリンスをした後お湯で洗い、タオルで水気を取る時は気持ち良さそうにするのですが、2台のドライヤーで毛を乾かす時だけは嫌がって逃げ回っていました。

体を洗った後、ゴールデン色の毛が太陽の光に照らされ美しく光る姿は 、これこそゴールデンレトリバーと思える瞬間でした。

散歩と運動

我が家のセラピー犬 ヴェル君

ブリーダーさんからヴェル君を譲ってもらった時、「大型犬は体重が増えると足腰が弱ったり、股関節を痛めやすく、年をとった時に歩行が難しくなる事があるので運動だけはしっかりして下さい」と言われていました。

人間の歩行速度に合わせて歩くのは散歩ですが、散歩では犬の運動にはなりません。
運動とは犬の足腰を鍛えるための行動です。
そのため毎日、自転車にリードをつなぎ自転車と並行して30分以上走っていました。

自転車と並行して走っている事に慣れたため、雨の日などに歩いて散歩をするとつまらなそうな目をするのでした。
それでも娘も一緒に散歩をすると慣れずにすぐ疲れる娘を気遣い、娘のペースに合わせてくれていました。

町の公園ではリードを離して遊ばす事ができなく、思いっきり自由に遊ばせたくて家族で私の生まれ故郷の山里に行き、山菜採りをしながら遊ばせた事がありました。
私達夫婦は山菜採り、子供達は川遊びをして楽しみましたが、その間ヴェル君は川の中へ入ったり山間の草むらに潜り込んだり思いっきり自由に飛び跳ねていました。

でもその後、ヴェル君が大変な目に遭っている事に気づきました。
帰る途中で全身にダニが付いてる事が分かり、可能な限り落としました。

帰ってから全身を洗い、再びダニ取りをしました。
それでも長い毛に潜んだダニを全て取る事は無理でした。

血を吸って大きく膨らんだダニは顔や目の周りに移動してきます。
その大きく膨らんだダニを取り除いて、完全にダニがいなくなるまで数日を要しました。

痒がるヴェル君を見てからは再び 山里に連れて行くことはなくなりました。

人混みを苦にしないヴェル君は、飼い主に似たのか若い女性が大好きで、愛想を振りまき人気者でした。
ヴェル君のお蔭で休日には桜見物や紅葉等の散策で1日を過ごす事もありました。

ヴェル君との別れ

ヴェル君との別れは突然でした。
庭で一日を過ごす時は革製の首輪に長い5m程のリードを付けて過ごしていました。

時々横切ろうとする野良猫を追い払う姿は わんぱく犬そのものでした。
足腰が強く元気でやんちゃ盛りの5歳になった5月でした。

前日の夕方に革製の首輪が切れたため、運動の時に勝手な動きをすると首が閉まるリードに変え、夜を過ごしました。

翌朝の明け方にヴェル君の何時もと違う異常な鳴き声に寝ていた私が気づき飛び起きました。
すぐに縁側から外に出て見ると、庭の端っこで横たわっているヴェル君を見つけました。

声をかけても触っても反応がありませんでした。
まもなくヴェル君の体が硬くなっていくのが分かりました。

野良猫を追いかけ、いつもと違う首が締まるリードで首が閉まり、即死状態である事を悟りました。
その日は5月の連休中で家族全員が家に居たため、家族全員で火葬場に行き、人を送る時と同じ様に葬ってあげました 。

小さな骨壷と化したヴェル君は、後に1日を過ごした庭の大きな石の片隅に埋葬してあげました。
今も庭から家族を見守っていてくれます。

ヴェル君は事故死ではありますが、発端となったのは私が前日にリードを取り替えたからでした。
悔やんでも悔やみきれませんでした。

家族の一員として皆んなの笑いを誘い、家族を和ましてくれました。
ヴェル君が亡くなった頃は娘もすっかり立ち直り学業に励んでいましたので、娘のためのセラピー犬としての役目は終わったと悟ったかのように思え、悔やんでいる自分を慰めていました。

再び飼いたい衝動

最初に記した様に愛犬家の皆さんのブログを見ていると、再びヴェル君と同じゴールデンレトリバーと過ごしたい気持ちになる事があります。
ヴェル君と過ごした期間はわずか5年余り、充実していましたが大変な日々でもありました。

犬の寿命は15年から20年の間です。
飼いたい衝動に駆られても、これから15年間充分に世話ができる自信がありません 。

途中で飼い主を放棄する様な無責任な飼い主にはなりたくありません。
娘達が責任を持って最後まで面倒を見てくれるのであれば話は別ですが・・・

最後に

今も庭の片隅に眠っているヴェル君を思い出すと、家族の窮地を救ってくれたセラピー犬であり守護犬であったと感謝しています。

愛犬家の皆さんは、癒されると同時に家族の一員として家族にとって良い結果をもたらしている事を肝に銘じて最後まで見守ってあげて下さい。